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重症心身障害児(者)医療

重症心身障害とは

重症心身障がいというのは重度の肢体不自由と重度の知的障がいとを合わせ持った状態です。具体的な病名は様々です。例えば紫香楽病院の重症心身障がい児(者)病棟の例では、 脳性麻痺、事故による脳損傷、染色体異常、先天性酵素欠損等、種々の疾患の患者さんが入院しておられます。このように重症心身障がいという言葉は医学的病名ではなく、むしろ行政的な用語です。 だからといって医療面では意味のない言葉というわけではありません。医療的に考えても、狭義の医療と同時に療育や手厚い看護が必要な患者さんであることが共通しています。  
また、実際に重症心障がい害の認定を受けている人は、必ずしもこの定義に当てはまる人ばかりではありません。様々な社会的状況も加味されて、広義の医療の必要性によって、より現実的な判定がなされ ているものと思われます。

重症心身障害の医療

私たちは新包括医療という考え方を提唱し、医療という言葉を最も広く理解しようとしています。しかし、ここには狭い意味の医療について記載しました。 頻度の高い合併症は次のようなものです。

 呼吸器感染症

肺炎などの重症呼吸器感染は重要な問題です。最近の医学の進歩はめざましく、感染症は軽い病気のように思われがちです。しかし、重い障がいを持つ人は、呼吸機能にも障がいをともないやすく、 軽い風邪から容易に重症の肺炎になることがあります。十分な注意が必要です。早期に通常よりも強力な治療が必要です。当院の入院患者さんでも普段最も気を使っているのは感染症です。抗生物質 による治療が中心ですが、呼吸状態を改善するための各種治療を同時に行います。

 他の呼吸器疾患

痰がうまく出せない人は肺の一部に空気が入らなくなる「無気肺」に注意が必要です。慢性的な低酸素状態による心不全も要注意です。呼吸機能に余裕がないと喘息等も重症化しやすくなります。 体位変換などで痰がたまらないように、また喘息発作は早めに処置するようにします。

 てんかん

脳細胞の過剰な電気活動による発作を繰り返す病気です。一般には0.8%位の頻度ですが、重症心身障がい児(者)では、はるかに高頻度に見られます。生命にかかわることは多くはありません。 発作は止める方が良いのですが、薬の副作用との関係もあり、発作にこだわりすぎると良くない場合もあります。(当院には日本てんかん学会が認定した臨床専門医がおりますのでご相談ください。)てんかんに関する 詳細はこちらをご覧ください。

 消化器疾患

便秘が多く、(特に筋肉の緊張の強い人では)油断すると腸閉塞が起こることもあります。消化器の機能障がいをともなうと、胃酸が食道へ逆流して、血を吐いたり、胃や十二指腸に潰瘍ができる人もいます。 便秘の予防と早期の処置、胃液が逆流しない体位の工夫、症状に応じた制酸剤等の内服などを行います。

 栄養

問題は消化機能の低下のみではありません。たとえば運動量が少ないと必要熱量は低下します。しかし、その分食事が減ると亜鉛などの微量元素の不足につながるといった問題があります。また口から食べら れないために注入食を利用される場合、長期的には思わぬ偏りが生じる可能性もあります。量よりも質の問題に神経を使います。

療育

重症心身障がい児(者)病棟は患者さんにとって、医療の場であると同時に生活の場でもあります。日常生活の遊びの中に、発達を促すようなものを取り入れたり、各種行事で社会体験の機会を作ったりします。 スタッフは指導員2名、保育士3名の計5名です。少ないスタッフですが、生活の工夫についてはリーダー的役割で、他の病院職員を牽引してくれます。活動内容の詳細はこちらをご覧ください。
現在はスタッフの数の関係で療育の対象は入院患者さんに限定されていますが、将来的には外来患者さんにも利用していただけるものを考えています。特に相談したいことがある場合は小児科までご連絡くだされば、できる範囲で考慮 させていただきます。

リハビリテーション

身体の障がいを持つ人にリハビリが重要であることはいうまでもありません。機能の獲得も重要ですが、それだけが目的ではありません。たとえば、体の変形は呼吸機能の障がいにつながる場合があります。 たとえ歩けるようにならなくとも、呼吸機能の悪化を予防できればそれも重要な意味を持つと考えられます。  
当院では現在はスタッフ数が十分ではないため、対象の患者さんは限定されています。
しかし、充実したリハビリを目指して努力が払われています。入院患者さんについては病棟スタッフにも協力してもらって、楽しい雰囲気のリ ハビリが行われています。音楽を利用したり、患者さん達の慣れた部屋を使うなど、少ないスタッフでも色々な工夫をしてもらっています。今のところ全員というわけには行かないのですが、少しでも多くの患者さんを対象にできる ように努力している様子がうかがえます。詳細はこちらをご覧ください。

教育

学齢期の入院患者さんは、併設の滋賀県立三雲養護学校紫香楽校舎へ通学しておられます。廊下続きの建物ですので、人工呼吸器を使用している重症の方でも体調の良いときは通学されます。体調が優れな いときは先生方が病棟へ出向いてくださいます。  
入院患者さんの中には三雲養護学校の高等部へ通学される方もたくさんあります。 
また特別な例ですが、外来患者さんで紫香楽校舎に通学された方もあります。制度的には入院患者さんが対象の校舎ですので今後も同様の対応をし てもらえるか否かはわかりませんが、先生方はいつも積極的な対応をしてくださいます。

病棟

新包括医療が目指す、患者さんの"心地よい環境"とは、病棟生活に他ならないという考えで、各職種の職員が力を併せて頑張っています。
病棟の説明は、1階病棟2階病棟のそれぞれでおこなっていますのでそちらをご覧ください。 

外来

在宅の重症心身障がい児(者)の方に対する外来診療は毎週火曜日と金曜日の午後、小児慢性疾患外来の中で行っています。予約制ですが、医師の診察については現在のところ余裕がありますので早くから予約 していただかなくても大丈夫です。リハビリの相談等は少し余裕を持って予約していただく必要があります。具体的には当院小児科までお問い合わせください。(平日午前の一般外来は予約不要ですが、診察時間に余裕が少なく、 風邪などに感染する機会も増えますので、お急ぎの用件でない方は午後の予約制の外来をおすすめします。)通院する事が困難な状況の方は条件が整えば医療スタッフの訪問も可能です。  

訪問

障がいを持つ在宅の患者さんを対象に医師、看護婦等の医療スタッフによる訪問を行っています。対象地域は 滋賀県全域と三重県の一部です。重い障がいのために病院へ通うのが難しい場合などにご利用ください。薬を出したり、その場で簡単な検査を受けてもらうこともできます。

新包括医療について

 新包括医療の概念

一般にいう包括医療は予防からリハビリまで含めた医療を指します。我々の言う新包括医療はこれとは異なる概念です。病気だけではなく患者さんを包括的にみる医療という意味で、全人医 療という言葉にも似ていますが、宗教的なニュアンスは含みません。

 包括する範囲

急性疾患の治療、理学療法、言語療法等はもちろん、患者さんにとって心地よい環境作り、ご家族が気安く面会に来られる環境作りまで含みます。そこまで医療に含めるのはおかしいといわれるか もしれません。確かに「何々療法」という名前はありません。しかし考えてください。解熱剤を使っても菌は死にませんが、病気のために熱がでれば解熱剤を使います。同様に病気のために家族とのふれあいが減るな ら、ふれあいやすい環境を作ったり、家族の代わりに愛情を注ぐことまでを医療と考えてもおかしくないと思います。つまり新包括医療で包括するのは患者さんのすべてです。

 従来の考えとの違い

新包括医療が従来の考えと最も異なる点は、医療の手段と考えられていたことを成果ととらえる点です。例を出します。ある患者さんが病院職員との人間関係で明るい気分になったとします。 人間関係が良好なほうが治療が円滑で、治療効果が上がるというのが従来の考えです。我々の考えでは治療効果が上がることとは別に、明るい気分になったこと自体が成果です。治療効果を上げるための手段とは考 えません。例えば脳性麻痺の患者さんは不幸ですか?遊びに行くのに不便ならばその点は不幸です。友達がほしいのに、知り合う機会がなければ不幸です。脳性麻痺だからではなく、制約を受ければそのことが不幸 なのです。そのような不幸を取り除くことは治療と同じ意味があると思います。こういう考えは職員にとって、限られた条件の中で患者さんのために最も有意義な行為は何であるかを選択する指針になると考えています。

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